「駐車場経営は儲からない」というネガティブな話が世の中にはありますが、この説が広まってしまった理由にはいくつかの事象があります。
例えば、収支のバランスや利幅が見えづらく、それらが結果として「儲からないのではないか?」という疑念が1つの結論としてささやかれるようになりました。
しかし、実際のところはどうでしょう。
もし、本当に儲からないなら世の中の駐車場の新規オープンが減っていてもおかしくはないでしょう。それにもかかわらず国交省の統計データ内の「届出駐車場」は年々増え続けています。(※)
あなたも、外を歩いている時に「ここも駐車場になったのか」と思ったことがあるのではないでしょうか。
では、反対になぜ不安な声が聞こえるのか?
本記事では「駐車場経営は儲からない」と言われている理由と失敗する原因、そして抑えるべきコツについて解説していきます。
※国土交通省 自動車駐車場年報 参照
駐車場経営が儲からないと言われている理由
では何故「駐車場経営は儲からない」といった俗説が存在しているのか、それには大きく3つの理由があります。
1.競合出現率が非常に高い
2.他の土地運用と比べた場合、収益額が低い
3.税金の負担が地味に多い
が挙げられます。
それでは上記3つの理由について詳しく解説していきます。
1.手軽さと競合出現率の高さ
駐車場経営の特徴として初期費用や管理コストといった側面を場合によっては分散したり抑えることができるので、他の土地活用方法と比べると比較的手元の資金が少なめでも開始することができます。
特に運営会社の仲介案内で「初期費用が0円」といったサービスを利用した場合、土地査定から早くて1カ月程度、初期負担分が0でオープンさせることが可能です。(※)
ですがその反面新規参入できる幅が広いので、特に駐車場のニーズが高い地域では近所に競合の駐車場が現れるケースが多々あります。
駐車場は稼働率が上がれば上がるほど利益が上がりますが、競合が現れた場合利用者が分散してしまい利益が下がってしまいます。
そういったことも踏まえて、自身の土地や周りの土地の動向、人の流動や地域外からの流動など様々な調査が必要となってくるのです。
※運営会社と契約している場合、初期費用を抑えられる理由は運営会社が初期費用を肩代わりしたり、将来的な利益からお互いに利益が出るような提案をする為です。
特に長期契約できる土地は貴重なため、ある程度のリスクを背負ってでもこうしたキャンペーンを打つ業者が増えています。
また、イメージ的なキャンペーンで言うと○○パークといった社名看板を掲げること自体に価値があるということも言えるでしょう。
土地オーナーはこうした駐車場運営会社の思惑に合わせWin-Winの関係を築くことが成功の鍵と言えます。
2.他の土地運用と比べた場合の収益性の低さ
土地の立地や規模にもよるのですが駐車場経営での収入を月々数万円から数十万円程度だとすると賃貸住宅経営の場合、数十万円から数百万円の収入となることが多いと言われています。
こうして比較したことが原因で「儲からない」というイメージがついてしまった可能性もあります。
また駐車場経営の場合、平面で経営することが多いのですが賃貸住宅経営の場合、より立体的に建てる複数階層を擁する場合、当然床面積が変わってくる為売り上げに差が出てくると言えるでしょう。
ただし駐車場経営以外の土地運用法は事前準備として初期費用がかなりかかります。
例えば二階建て6室のアパートを新規で建てる場合は3000万円から7000万円程度の投資が必要です。
また箱物の場合は建てた住居の入居率による売り上げの上下など、建てた後も様々な手がかかります。ハイリスクを抱えているからこそハイリターンが返ってくるのです。
3.実はこれだけある税金の負担
駐車場経営は初期費用が抑えられるものの賃貸住宅経営と比べ、税金の負担が大きいことも「儲からない」と言われてしまう原因です。
アパートやマンションなどの賃貸住宅が建っている土地には「住宅用地の軽減特例」として固定資産税、都市計画税に軽減措置が適用されるのですが、駐車場経営ではそれらの軽減措置を受けることができません。
その為、賃貸住宅経営と比較すると固定資産税は最大で約6倍、都市計画税は最大で約3倍の税金がかかることもあるようです。
箱物で受けることのできる主な軽減措置の例はこちらです↓
税金の種別 | 土地面積 | 軽減適応額 |
固定資産税 | 住戸1戸につき200㎡以下の部分 | 課税標準額の1/6 |
固定資産税 | 住戸1戸につき200㎡超の部分 | 課税標準額の1/3 |
都市計画税 | 住戸1戸につき200㎡以下の部分 | 課税標準額の1/3 |
都市計画税 | 住戸1戸につき200㎡の部分 | 課税標準額の2/3 |
またこの他にも消費税、個人事業税、所得税などかかってくる場合がありますので、もし個人経営で経営している場合、税理士などの専門家に任せるのも一つの手です。
よくある失敗談
駐車場経営でよく挙げられる失敗談の原因としては大きく分けて3通りあります。
・市場調査不足
・初期投資費用の見誤りや経費の目算の甘さ
・トラブル対応時の手間と費用の見積もりの甘さ
などが挙げられます。
こちらの項目ではそれらの原因について解説していきます。
もしかして足りてない?市場調査
一つ目の原因は「市場調査不足」です。
これは主に周辺環境の調査(需要)や、利用者への理解が浅いことなど複数の要因が重なっています。その要因を明らかにし、対策することで、新しい切り口で利用者に選ばれる可能性が高まります。
需要を決める要素
まず、周辺環境の調査を徹底的に行います。
例えば商業施設や繁華街が多い区画とオフィスビルが多くある区画では需要が全く異なります。前者で言えば周辺の交通量が多く短時間での利用も見込まれますが、逆に後者であれば定期的に使うことに加え長時間の利用が見込まれます。
また周辺に競合となりうる駐車場があるのか、その駐車場はどういった層の利用者を狙っているのかといった情報を想定することで、自身の駐車場にもそれらの情報を反映し、調整を行うことができます。
利用者の使いやすさ
次に利用者に対する理解を深めるとより利用者が使いやすい駐車場となります。
特に大通りへの距離や夜間の駐車場の明るさ、車の出し入れのしやすさは非常に重要です。
こういった内容は利用者同士での口コミで「あの地域ならあそこの駐車場は使いやすい」と周知されやすくなる一因となります。
例えば商業施設が近くにある駐車場では車の出し入れの他に、荷物の積み込みがしやすいとより使い勝手がいい駐車場としてリピーターを獲得できるでしょう。
開発地域の特異性
例えば、駐車場化する土地の周りに建設中の建物が沢山ある場合、それらの作業に関する駐車場利用が増えるかも知れません。
これらは通常の需要とは異なる需要となる為、特需となったり、っ撤退後は一時的に売り上げがダウンするなどの波が考えられます。
想定以上の出費もあるかも?初期投資で必要になるもの
二つ目の大きな原因は初期投資の見誤りや経費の見積もりの甘さによるものです。
駐車場経営は初期投資の価格が他の土地運用方法と比べ算定し易かったり、業者のキャンペーンで軽減できる可能性がありますが、全くかからないというわけではありません。
特に駐車場運営会社との契約の際には「初期投資0円」といった謳い文句が目に入ります。
これは後々の運営で初期投資分のお金を取り返せる見込みがあるという事なので、一旦負担を駐車場事業者が肩代わりしてくれているという状態です。少し異なりますが一時的な借金、ローンや奨学金のようなものと考えることもできます。
つまり長期で見て、両者の分配からそれぞれ初期費用を払っている状態と言えるでしょう。
その経費、ちょっとかかりすぎてない?
駐車場経営は、他の土地活用方法と比べると収益性が低いと言われている土地活用方法です。そのため、月々の経費がかかりすぎると、収入を超えて支出が増え、赤字となる可能性があります。駐車場経営を行う際には、無駄な経費がないかを確認し、収入と支出のバランスをしっかりと見極めることが大切です。
「ランニングコストが低い」と言われている駐車場経営でも下記のようなコストが掛かってきます。
・電気代
・消耗品代
・管理・清掃費
・固定資産税や都市計画税といった税金
経営前にこれらのコストを踏まえたシミュレーションが重要です。
どの程度の売り上げが見込まれそうなのか、その売り上げから経費を抜いた利益はどのくらいなのか、致命的な赤字を生む要因はないのかといったことを項目別に精査し、事業者と相談します。
トラブル対応の手間と費用の考慮
駐車場で起こるトラブルは千差万別で、オーナーを悩ませる問題はいつ何時発生するかわかりません。
トラブルの対応には手間暇がかかってしまい、放置しているとどんどん問題が大きくなっていき、利用者の離脱につながってしまいます。
こちらでは、駐車場経営中に見舞われるトラブルの種類や入っておいた方がいい保険をご紹介します。
見舞われるトラブルの種類
下記は駐車場内で起こるトラブルのほんの一例です。
このほかにも災害や機械トラブルなど上げればきりがないほど駐車場に潜んでいるトラブルは多いです。こういったトラブルに対しての手間や費用を惜しんでしまったために、トラブルを放置し適切な対応を取らないでいる姿勢から利用者が離れていってしまう可能性もあります。
またトラブルの芽を放置していたばかりに大きな問題となってしまう場合もあります。
・騒音問題
・駐車場内での事件、事故
・料金トラブル
・近隣住民とのトラブル
こういったトラブルの芽は早々に対応して順調な駐車場運営に注力したいですね。
下記記事から駐車場・コインパーキングで発生するトラブルについて数多く紹介していますのでぜひ確認しておきましょう。
駐車場経営にも保険はある
駐車場経営ではトラブルに対する保険への加入も推奨されます。
「接触事故があり、設備の一部を破損してしまった」「放火に遭って、設備が燃えてしまった」など、基本的なトラブルをカバーできる例を3つご紹介します。
施設賠償責任保険 | 施設内での事故による第三者への賠償責任をカバーする保険 |
動産総合保険 | 所持する動産(設備や在庫など)に対する損害を幅広く補償する保険 |
火災保険 | 建物や家財が火災や自然災害などで損害を受けた場合に補償する保険 |
こういった保険は細かな規定があるため、実際に入れるかどうかは保険会社さんと相談や、駐車場事業者のアドバイスを取り入れて考えていきましょう。
駐車場内で発生したトラブルでオーナー側に責任が及んでしまうケースなどもあります。そういった場合のトラブルシューティングや事前準備も経営に踏み出す前に理解しておきたいですね。
儲けるために押さえておくべきコツ
駐車場経営で「儲からない」と言われているのには理由や俗説、その他の感想から自然的に発生していることが変わりました。
次に、今後のあなたの駐車場経営を助け、収益を上げて儲けるために押さえておくべきコツを絞って解説します。
今回紹介するコツは大きく2つ。「適切な料金設定」と「課税される税金の金額の把握」です。
適切な料金設定
料金設定は経営開始のこの時期が一番大切です。周辺の地域に同じような規模の駐車場が無いか、その料金は?過程としてAという料金を取って経営を開始した場合、大体何台がどの程度のサイクルで利用してくれたら安定した黒字となるのかなどをしっかりと計算することが必要です。
・近隣の駐車場の設定価格
・利便性の要素
・大通りに面しているか
・回転率
・回転率を考慮した駐車枠の設定
そのシミュレーション時には上記のことに注視しながら進めるといいでしょう。
またコインパーキングのような時間貸しの駐車場では時間幅による加算や上限金額の設定などもあります。「〇時間以上〇〇時間以内○○○○円」といった形の価格設定です。
こういった事例を参考にして適切な価格を設定できるようにしましょう。
コインパーキング経営で設けるための知っておくべき成功のコツ! 確認すべきセオリーはこちら→
【駐車場の料金設定マニュアル】近隣相場を把握して集客効率UP!
課税される税金
経営中のランニングコストの他に税金も忘れてはいけません。
あなたの駐車場にかかる可能性のある税金は以下の5つになります。
・固定資産税
・都市計画税
・消費税
・個人事業税
・所得税
・償却資産税
これだけの税金がかかってくるので、経営開始前の収入シミュレーション時にどれだけ税金として支払うのかを算出してみるとよいでしょう。
駐車場のある地区で利用できる補助金制度が無いか調べてみたりするのもいいかもしれませんね。