駐車場経営を検討している方に注目されている「一括借り上げ」とは、運営の手間を省きながら安定した収益を得られる仕組みです。
しかし、メリットが多い一方で、契約内容や条件を正しく理解しないと、思わぬデメリットに直面することもあります。
本記事では、一括借り上げの基本的な仕組みから、土地オーナーにとってのメリット・デメリット、契約時に注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。
一括借り上げを活用して、効率的な駐車場経営を目指すための第一歩を踏み出しましょう!
一括借り上げとは
一括借り上げとは、土地や物件を運営会社に貸し出し、利用状況に関わらず一定の賃料を受け取れる仕組みです。
管理や運営は全て運営会社が行うため、手間なく安定した収益が得られます。
一括借り上げの仕組み
一括借り上げは、土地を運営会社に貸し出し、毎月一定の賃料を受け取る仕組みです。
例えば、100坪の土地に駐車場を整備し、運営会社と月20万円の一括借り上げ契約を結ぶ場合、稼働率に関係なく毎月20万円が保証されます。
運営会社は利用者から収益を得るため、利用状況のリスクは運営会社が負担します。
オーナーは運営や管理の手間をかけずに収益を得られるため、効率的に土地を活用できます。
一括借り上げと他の経営方式の違い
一括借り上げは、リスクを運営会社に任せ、安定収益を得られる点が大きな特徴です。他方式と比べて管理の負担が少ないのが魅力です。
それに対して、自主運営方式ではオーナー自身が運営し、収益を直接得られますが、管理や利用者対応の手間がかかります。
また管理委託方式は、運営は専門会社に任せつつ、収益はオーナーが得る仕組みで、管理費用が発生します。
一括借り上げが適している駐車場タイプ
一括借り上げは、利用率が不安定なエリアや、運営や管理に時間をかけたくない場合に適しています。例えば、住宅街や地方都市の駐車場では、利用者が一定数確保できないこともありますが、一括借り上げなら稼働率に関係なく安定した収益が得られます。
また、大規模な駐車場や長期間使われていなかった土地でも、一括借り上げにより効率的に運用できます。手間を減らし、確実な収入を得たい場合に特に適した方式です。
「一括借り上げ」と「サブリース」との違い
サブリースとは一括借り上げと同じく、土地や物件の所有者(オーナー)が第三者(運営会社など)に貸し出し、運営会社が利用者に再貸しする「転貸借」と呼ばれる形態です。
一括借り上げに比べると、契約条件が柔軟で、短期間や特定の用途に限定するケースが多いです。
駐車場経営、シェアハウス、商業テナントなど、特定の分野でよく使われます。
下記は一括借り上げとサブリースの違いの比較表です。
このように安定収益を重視する場合は、「一括借り上げ」が適しています。特に長期間安定した収益を得たい場合に有効です。
また柔軟性や事業内容に応じた運用を希望する場合は、「サブリース」が向いています。特定用途の事業や短期間の活用にも適しています。
一括借り上げ | サブリース | |
契約の仕組み | 全体を借り上げ、固定賃料を支払う | オーナーから借り、利用者に転貸する |
契約期間 | 長期間の契約が多い | 短期契約も可能 |
収益の特徴 | 常に固定収入 | 固定型または変動型(稼働率で変動する場合あり) |
収益性 | 利用状況にかかわらず固定 | 利用状況に応じて変動する場合あり |
管理業務の責任 | 運営会社がすべて対応 | 契約によりオーナーが一部負担する場合もある |
契約条件の柔軟性 | 比較的固定的 | 柔軟な設定が可能 |
利用例 | 賃貸物件、商業施設、駐車場 | 駐車場、特定用途のシェアスペース、商業テナントなど |
一括借り上げのメリット・デメリット
一括借り上げには、土地オーナーにとって収益の安定や管理負担の軽減といったメリットがある一方、収益の上限や契約条件による制約といったデメリットも存在します。
この項目では土地オーナーにとってのメリット・デメリットを解説いたします。
土地オーナーにとってのメリット
一括借り上げを採用した場合、土地のオーナー様は下記のようなメリットを受けることができます。
こうしたメリット内容が複数ありますが、次の項目の様にデメリットもありますのでよく検討の上、一括借り上げ方式を導入してください。
下記はメリット内容になります。
初期費用負担がない
多くの場合、運営会社が整備費用や設備設置費を負担するため、大きな初期投資を避けられる。
安定収入が得られる
利用状況に関わらず、運営会社から一定の賃料を受け取れるため、収益が安定。
運営リスクを運営会社が負担してくれる
駐車場の稼働率や利用者数の変動リスクをオーナーが負わなくて済む。
管理業務が不要
賃料集金、清掃、設備メンテナンス、利用者対応などをすべて運営会社に任せられる。
遊休地や空き地の収益化できる
活用していない土地を収益源として有効利用できる。
柔軟な土地利用が可能
短期的な土地活用や将来の用途変更を視野に入れた運用がしやすい。
手間をかけずに効率的な運用ができる
労力を抑えながら安定的な収益を得られるため、負担が少ない。
土地オーナーにとってのデメリット
一括借り上げを採用した場合に土地のオーナー様が受ける可能性のあるデメリットもいくつかあります。こうしたデメリットも潜んでいますので一括借り上げを導入する際はご注意ください。
下記はデメリット内容になります。
収益の上限が固定される
利用者が多くても契約時の賃料以上の収益は得られない。
賃料が市場価格より低く設定される可能性
営会社がリスクを負うため、賃料は通常の収益見込みより低くなることが多い。
契約期間中の自由な土地利用が制限される
契約期間内は他の用途に転用したり売却したりするのが難しい場合がある。
運営会社の信用リスク
運営会社が経営不振や倒産した場合、賃料が支払われない可能性がある。
契約終了後の原状回復コスト
契約終了時に設備の撤去や土地の原状回復が必要となり、費用が発生する場合がある。
賃料の見直しリスク
長期契約の場合、賃料が市場の状況や契約条件により引き下げられる可能性がある。
他方式より収益性が劣る場合がある
自主運営や管理委託方式と比べて、収益が少なくなるケースがある。
一括借り上げの賃料相場
一括借り上げ(サブリース)契約における賃料相場は、物件の所在地や特性によって大きく異なります。以下の表は地域別の一般的な賃料相場の目安です。
■都市部(東京、大阪など)の賃料相場
賃料相場 | 1台当たりの月額賃料 2~5万円程度 |
特徴 | 人口密度が高く、駐車需要が見込まれるため 賃料が高めに設定されている |
■地方都市の賃料相場
賃料相場 | 1台当たりの月額賃料 1~3万円程度 |
特徴 | 都市部に比べ駐車需要が低いため、賃料もやや抑えられた金額になっている |
■郊外・地方の賃料相場
賃料相場 | 1台当たりの月額賃料 1万円未満の可能性がある |
特徴 | 人口が低く、駐車需要が低いため賃料が低めに設定してあることが多い |
これらの相場は目安であり、実際の賃料は物件の立地条件や周辺環境、競合状況などによって大きく変動します。契約前に、現地の市場調査や専門家の意見を参考にすることをおすすめします。
一括借り上げに向いている人
一括借り上げに向いているという人は下記のような条件に当てはまる方です。
もし、自分の考え方や傾向に似ていると考えられたのなら、一括借り上げを選択肢の一つとして加えてみるのはいかがでしょうか。
安定した収益を重視する人
稼働率に関係なく固定賃料が支払われるため、収入が安定します。市場の変動や空き駐車スペース発生のリスクを避けたい人に適しています。
管理や運営に手間をかけたくない人
運営会社が全ての管理業務(清掃、集金、メンテナンスなど)を行うため、時間や労力を割きたくない人に向いています。
賃貸経営に不慣れな人
駐車場経営や賃貸運営に関するノウハウがなくても、運営会社がリスクや業務を担うため、安心して始められます。
遊休地や空き地を収益化したい人
活用されていない土地を有効活用できるため、収益を生まない土地を抱えている人に適しています。
将来的な土地転用を考えている人
短期的な契約や一定期間の収益確保が可能なため、将来的に土地を売却したり、他の用途に利用したいと考えている人に適しています。
地方や稼働率が不安定なエリアに土地を持つ人
利用者が少ない地域でも賃料が固定されるため、需要が読みにくい土地を持つ人にとってリスクを軽減できます。
リスクを避けたい人
利用者対応や収益の上下動といった運営リスクを運営会社に任せられるため、安全志向の人に向いています。
駐車場一括借上げの場合の費用
駐車場に一括借り上げを導入すると、費用面についてさまざまな影響を及ぼします。
ここでは、初期費用や月々のコスト、固定費用と変動費用の観点から一括借り上げ導入による影響がどのようなものなのかを具体的に解説します。
初期費用と月々のコスト
一括借り上げを導入している場合、初期費用と月々のコスト負担が軽減されることが多くあります。
これは運営会社が駐車場の整備費用(舗装、ライン引き、設備設置など)を一部または全額負担してくれるケースが多いため、このような場合に限り、オーナーは大きな初期投資を避けることができます。
また、月々の運営コスト(清掃、メンテナンス、集金業務など)は運営会社が担うため、オーナーによる経費の負担はほとんどありません。
その代わり、賃料は市場相場より低めに設定されることが多いです。契約内容により条件が異なるため、詳細確認が重要です。
固定費用と変動費用
一括借り上げでは、固定費用と変動費用に対する負担が大幅に軽減されます。
固定費用(例:土地の固定資産税やローン返済)はオーナーが負担しますが、一括借り上げの安定した賃料収入により、それを補うことができます。
一方、変動費用(例:清掃費、設備修繕費、集金業務など)は運営会社が負担するため、オーナーはこれらを気にする必要がありません。
これにより、運営に伴うコストの予測が容易になり、収益計画を安定的に立てることが可能です。
一括借り上げサービス提供会社の選び方
信頼性の確認方法
一括借り上げを検討する際、運営会社の信頼性を確認することが非常に重要です。
以下に、特に注意すべき記載内容や確認すべき事項を挙げます。
賃料保証の条件
賃料保証の期間や金額の明確な記載があるか、将来的な賃料の見直しや減額条件が細かく定められているかといった部分について確認しましょう。
また、「一定期間後に賃料が減額される可能性がある」などの文言がないか注意してください。
契約期間と解約条件
契約期間が長期か短期か、オーナー側から途中解約が可能なのか、またその条件は何かといった部分の記載がないか注視しましょう。
特に長期間の契約では自由な土地利用が制限されるため、解約時のペナルティがないか確認が必要です。
運営会社の実績
運営会社の設立年、経営実績、他の一括借り上げ事例の実績データや他の土地オーナーからの評判や口コミなどの内容を確認してみましょう。
実績が少ない会社や評判が不明確な場合、経営が不安定な可能性があるため慎重に検討してください。
トラブル対応の体制
利用者とのトラブルや設備故障時の対応範囲が明確に記載されているかについてよく確認しましょう。
その際、「トラブル対応はオーナーが負担する」といった不利な条件がないか確認しましょう。
原状回復義務
契約終了時の設備撤去や土地の原状回復義務の詳細について具体的に記載されているかについて確認しましょう。この内容があいまいな場合、大規模な撤去費用がオーナー負担となる可能性があるため、契約前に確認してください。
資金力と経営の安定性
運営会社の財務状況や資本金、売上高などを公開しているか、信用調査会社のレポートや公式サイトの情報を確認しましょう。もし運営会社の経営が不安定な会社の場合、賃料の支払いが滞るリスクがあります。
契約書の専門家による確認
契約内容全般について、弁護士や不動産専門家に確認をしてもらうようにしましょう。
素人では気づきにくい不利な条件が隠されていることがあるため、専門家の助言を受けましょう。
契約条件の比較ポイント
一括借り上げサービスを提供する複数の運営会社を比較する際、以下のポイントをチェックし、選定するとあなたの求める条件に合った最適な選択ができます。
賃料保証額
毎月の賃料保証額が他社と比べて適正かどうか、保証賃料の設定が市場相場や土地の立地条件に基づいているかどうかをチェックしましょう。初年度の賃料が高くても、更新時に大幅に減額されるリスクがあるため、長期的な保証額を確認すべきです。
賃料の見直し条件
賃料見直しの頻度(例:1年ごと、5年ごと)とその条件が明確かどうか、見直し基準が市場動向に沿っているかも確認しましょう。
特に「市場変動」や「建物の劣化」など曖昧な基準が記載されていないか要チェックです。
契約期間と解約条件
契約期間が柔軟か、長期契約の場合のリスク(解約条件やペナルティ)が明確かどうか、オーナー側からの途中解約が可能か、またその条件明記されているかを確認しましょう。
解約時に多額の違約金が発生するケースもあるため、解約条項を詳細に確認する必要があります。
運営コストの負担範囲
清掃費、設備維持費、修繕費などの負担責任が運営会社かオーナーのどちらにあるのかを確認しましょう。
「オーナー負担」とされる範囲が広い場合、実質的なコスト負担が増えるため注意してください。
トラブル対応の範囲
利用者トラブルや駐車場設備の不具合に対する対応を運営会社がどこまで引き受けてくれるのか、対応範囲を確認すべきです。もし、範囲の適応外だった場合「オーナー責任」となることもあすため、具体的な対応範囲を確認しましょう。
初期費用負担
駐車場の整備費用(舗装や設備設置など)を運営会社が負担するかどうか、また負担してくれる範囲はどこまでなのか、負担してくれた初期費用の返済スケジュールについても確認しましょう。
初期費用を一括で請求される場合、その回収期間を考慮する必要があるためです。
契約終了時の原状回復義務
契約終了後、設備の撤去費用や土地の原状回復が運営会社の負担かオーナー側の負担なのかどうかを確認する必要がある。
「原状回復はオーナー負担」とされている場合、大きな費用が発生する可能性がある。
運営会社の実績と評判
契約した他のオーナーからの評判や、運営会社の過去の実績を調べましょう。極端に実績が少ない会社や、トラブルの多い会社は避けたほうが無難です。
保証の範囲
天災や事故による駐車場の損害について、運営会社がどの程度保証してくれるかについてもよく確認しましょう。保証内容が限定的でオーナーの負担が大きい場合はリスクを考慮し、契約を結ぶかどうか検討しましょう。
契約書の明確さ
条件が簡潔かつ明確に記載されているか、不明瞭な点がないかといった部分に着目しましょう。一目でわからない場合は不利な条件が隠されていないか、専門家に確認するのも重要です。
問い合わせ時のチェックリスト
一括借り上げサービス提供会社を選ぶ際には、問い合わせ時に以下の項目を確認すると、信頼性やサービス内容を比較しやすくなります。
賃料保証について
・保証賃料の金額と設定基準は?
・賃料の見直しはどのタイミングで行われる?
・長期間にわたる保証額の変動リスクは?
契約内容について
・契約期間は何年か?途中解約は可能か?
・解約時の条件や違約金について詳しく説明してもらえるか?
・契約終了後の原状回復義務はどちらが負担するのか?
初期費用と月々のコストについて
・駐車場の整備費用(舗装、ライン引き、設備設置など)はどちらが負担するか?
・月々の維持費や修繕費は含まれているか?
トラブル対応について
・利用者とのトラブルや設備故障時の対応はどちらが行うのか?
・運営会社が対応する場合、その範囲はどこまでか?
実績と評判について
・会社の設立年や過去の運営実績は?
・他の契約者(オーナー)の具体的な成功事例を教えてもらえるか?
・トラブルが発生した際の対応事例について質問する。
保証やサポートについて
・保証対象外のケース(天災、事故など)はどのようなものか?
・契約後のサポート体制や連絡窓口はどうなっているか?
賃料保証の算出基準について
・土地の立地条件や面積、需要をどう評価して賃料を設定しているか?
・他の土地での賃料保証額と比較できるか?
競合会社との違い
・他社とのサービスの違いや強みを具体的に説明してもらえるか?
・運営方式や契約条件が他社と比べてどのように優れているのか?
契約書の内容について
・契約書のひな型を事前に見せてもらえるか?
・不明点や疑問について、具体的に説明してもらえるか?
財務状況や信頼性の確認
・財務情報や会社の安定性について質問し、回答が曖昧でないか確認する。
・信用調査機関の評価や公開されたデータについて質問する。
どの会社と契約するべきか判断が難しい場合
どの会社と契約するべきか迷った場合は、一括見積もりサービス「パー王様」を活用するのがおすすめです。
パー王様では、最大40社から無料で一括見積もりを取得でき、各社の賃料保証額や契約条件、管理内容を簡単に比較できます。
初期費用や管理業務の負担、契約期間など、自分の土地や経営方針に合った条件を効率的に見つけられる点が魅力です。
また、パー王様では駐車場経営に関する情報提供やコンサルティングも行っており、土地活用の選択肢を広げるサポートが受けられます。
迷ったときは、こうした専門サービスを利用することで、最適な選択をスムーズに進められます。
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一括借上げの契約の流れと手続き
一括借り上げでは、契約内容を十分確認することが重要です。
保証賃料や初期費用の条件、契約期間や更新・解約の詳細を把握し、トラブルを防ぐ準備をしましょう。
契約の概要と重要な条件
一括借り上げの契約は、主に以下の流れで進みます。
契約の流れを把握してその時どのような条件を確認すればいいのか、タイミングを知りましょう。
また、不明点があれば契約前に必ず運営会社に確認してください。
ステップ1 土地調査と条件提示
運営会社が土地の立地条件や収益性を調査します。
調査結果をもとに、賃料保証額や契約条件を提示されます。
ステップ2 契約書の確認
提示された契約書の内容を詳細に確認します。
この時特に重要な条件は、以下の3点です。
・保証賃料の額と見直し条件
・契約期間と解約条件
・初期費用や運営費用の負担範囲
ステップ3 契約内容の最終確認
賃料が固定か変動か、また更新時の条件を確認します。
契約終了時の原状回復義務やトラブル対応の範囲も重要な確認ポイントです。
ステップ4 契約締結
全ての条件に納得した上で契約を締結します。
不明点があれば、必ず契約前に運営会社へ質問し、解決してから進めます。
契約期間と更新・解約について
一括借り上げの契約期間は、一般的に5年や10年などの中長期が多く設定されます。
契約期間中は、運営会社が保証賃料を支払う代わりに、オーナーは土地を他の用途に転用することが制限されます。
更新時には、賃料の見直しが行われることが一般的で、その条件(減額の可能性や見直し基準)は契約書に記載されています。
解約については、オーナー側からの途中解約が制限されている場合が多く、解約時の違約金や手続き条件も確認が必要です。
契約前に更新・解約条件を詳細に確認しましょう。