土地活用の一つとして注目される駐車場経営。
その中でも、個人経営方式は高い収益性と運営の自由度を兼ね備えた方法として人気を集めています。
本記事では、個人経営方式の特徴やメリット・デメリットを解説し、具体的な開業ステップや成功のポイントを紹介します。
個人でも駐車場経営ってできるの?
個人でも駐車場経営は十分に可能です。
個人経営方式での駐車場経営は、自分で運営を管理するため、収益を最大化できる点が魅力です。
既に土地を所有している場合は、遊休地を活用することで初期費用を抑えられます。
一方、土地を持っていない場合でも、適切な立地で土地を借りたり購入したりして運営を始めることも可能です。
ただし個人での駐車場経営の場合には、整備や設備導入に資金が必要なほか、日々の管理業務やトラブル対応などの負担も発生します。
個人経営方式とは?その仕組みと特徴
個人経営方式とは、土地の所有者や運営者が駐車場の管理と運営をすべて自ら行う経営スタイルです。
この方式では、設備の導入や料金設定、日々の管理業務、利用者対応など、運営に関わるすべての要素を自分でコントロールすることが求められます。そのため、収益を全額受け取れる自由度の高さが特徴です。
一般的な運営形態
個人経営方式で運営される駐車場には、以下のような形態があります。
コインパーキング
短時間利用を目的とした駐車場で、時間ごとに料金を徴収します。精算機や車両検知システムの導入が一般的です。繁華街や商業施設の近隣に多く見られます。
月極駐車場
契約者に対して一定期間の駐車スペースを貸し出す形式です。住宅街やオフィス街で需要が高く、長期的な契約が多いため、安定した収益が見込めます。
混合型
コインパーキングと月極駐車場を併用する形式で、土地の利用効率を最大化するために設計されることが多いです。昼間は短時間利用者、夜間は長期利用者といった形で運営されるケースがあります。
他方式(管理委託・一括借り上げ)との違い
個人経営方式の最大の特徴は、運営の自由度と責任の両方を持つ点にあります。他の運営方式と比較すると、次のような違いがあります。
管理委託方式
駐車場の管理業務(清掃、集金、利用者対応など)を専門会社に委託する方式です。土地の運営を簡略化できる反面、委託料が発生するため、利益は減少します。
関連:駐車場経営の管理委託方式とは?費用の相場や業者の選び方を解説
一括借り上げ方式
専門会社が土地を借り上げ、運営もすべて代行する方式です。運営の手間やリスクがない一方で、収益は一定額に固定され、運営状況による利益増加の恩恵を受けられません。
個人経営方式のメリットとデメリット
メリット
収益性の最大化
管理業務を外部に委託しないため、駐車場の利用料金がすべて運営者の収益となります。設備投資や管理費用を抑えれば、利益率を高く維持することが可能です。
運営の自由度
駐車料金の設定や運営スタイルを自身の判断で柔軟に変更できます。周辺の競合状況や需要の変化に合わせて迅速に対応できる点が強みです。
土地活用の最適化
個人経営方式では、土地の広さや立地条件に応じて最適な運営形態を選択できます。たとえば、昼間はコインパーキング、夜間は月極契約として運営することで、収益を最大化する方法も取れます。
設備やサービスの独自性
利用者の満足度を高めるための設備やサービスを導入しやすい点もメリットです。防犯カメラの設置、利用者向けの割引サービスなど、オリジナリティのある運営が可能です。
デメリット
管理業務の負担
日々の清掃、集金、設備メンテナンスなど、駐車場の運営に必要な業務はすべて運営者が行う必要があります。また、利用者からの問い合わせやトラブル対応も求められるため、管理の手間がかかります。
初期投資の必要性
駐車スペースの整備や必要な設備(ライン引き、精算機、監視カメラなど)の導入には、一定の初期費用がかかります。
この投資を回収するまでに時間がかかる場合もあります。
ちなみに、一括借り上げ方式では、土地を駐車場運営会社に貸し出すため、初期費用は不要となります。
リスク管理が必要
無断駐車や利用者同士のトラブル、設備の故障など、運営中に発生するリスクに対してすべて対応する必要があります。特に、これらのトラブルが頻発すると、運営者の負担が増大します。
収益の変動
利用者数が多い時期は高収益が期待できる一方、立地や需要によっては稼働率が低下することもあります。特に季節や周辺環境の変化による影響を受けやすい点は留意が必要です。
個人経営方式での駐車場開業までのステップ
ステップ1 土地の準備
1.土地の選定
駐車場として利用する土地を用意します。立地条件が収益に大きく影響するため、次のポイントを重視します。
・人通りや車の交通量が多いエリア
・商業施設や駅、オフィス街の近隣
・駐車需要の高い住宅街
2.土地の確保方法
・所有している土地を利用…遊休地や活用していないスペースを整備して駐車場に転用します。
・土地を購入または借りる…適切なエリアに土地を新たに取得する場合は、収益性を十分にシミュレーションして判断します。
ステップ2 設備投資と整備
1.必要な設備の選定
駐車場の種類(コインパーキング、月極駐車場など)に応じて、以下の設備が必要となることがあります。
・ライン引きや区画標示…駐車スペースの明確化
・精算機…料金の自動回収(コインパーキングの場合)
・監視カメラ…防犯対策
・照明…夜間の視認性向上
・車止めやゲート…車両の誘導とトラブル防止
2.設備費用の計画
設備導入には初期投資が必要ですが、費用を抑えるために中古機器の活用や最小限の設備から始めることも検討できます。
3.整備作業の実施
必要な工事や設備の設置を行い、駐車場を稼働できる状態にします。
この際、安全性や利便性に配慮した設計を心掛けましょう。
ステップ3 収益プランの作成
1.料金設定
周辺駐車場の料金を調査し、競争力のある価格を設定します。
需要に応じて、時間帯別料金や定額制など柔軟な料金体系を取り入れます。
2.収益シミュレーション
稼働率や料金をもとに、収益見込みを試算します。
初期投資の回収期間を見積もり、無理のない運営計画を立てます。
ステップ4 運営開始
1.宣伝と告知
地域の人々や通行車両に駐車場の存在を知らせるため、目立つ看板を設置します。
インターネットや地域の掲示板を活用して、駐車場の情報を広めます。
2.オープン時の対応
割引キャンペーンや特典を提供し、利用者を増やします。
トラブルが発生しやすい初期段階では、スムーズな対応のために連絡体制を整えます。
3.日々の管理
定期的な清掃や設備点検を行い、利用者にとって快適で安全な環境を維持します。
個人経営方式を成功させるコツ
個人経営方式で駐車場を運営する場合、安定した収益を確保するためには、運営の工夫やトラブルへの対策が重要です。
この項目では、成功のために押さえておきたいポイントを解説します。
収益を最大化する方法
1.料金設定の最適化
周辺の競合調査を行い、需要に合わせた料金を設定します。価格を安くしすぎると収益が減少し、高すぎると利用者が離れるため、バランスを取ることが大切です。また、時間帯や曜日ごとの変動料金制を導入することで、稼働率を向上させることも効果的です。
2.利用者層に応じた運営方針
商業エリアでは短時間利用者を意識した料金設定
住宅地では長期契約者向けの月極駐車場の併設
このように、立地条件に適した運営方針を採用します。
稼働率を上げるアイデア
1.アクセスの分かりやすさを確保
大通りから見やすい看板を設置したり、駐車場への入り口を分かりやすくすることで、利用者の利便性を向上させます。看板には料金体系を明示し、利用者が直感的に判断できるようにしましょう。
2.オンライン予約や支払い対応
スマートフォンで事前予約ができるシステムを導入することで、利用者の利便性を高めます。また、キャッシュレス決済やQRコード決済に対応することで、幅広い利用者に対応できます。
3.プロモーション活動
地域の住民や通行者に向けて、期間限定の割引キャンペーンやオープン記念特典を提供することで、認知度と利用率を向上させます。
トラブルを防ぐ方法
1.明確なルールの提示
駐車場内での利用規約を分かりやすく掲示し、無断駐車や迷惑行為を防ぎます。
具体的な罰則規定を設けることで、利用者のルール遵守を促進します。
2.設備の維持管理
精算機や車両ゲート、監視カメラなどの設備が正常に動作していることを定期的に確認します。故障を放置すると、利用者の満足度低下や収益減少につながります。
3.トラブル対応の迅速化
無断駐車やトラブル発生時にすぐ対応できる体制を整えます。専用の問い合わせ窓口や連絡先を明示しておくことで、問題解決をスムーズに進められます。
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効率化のための工夫
1.管理システムの活用
自動精算機や遠隔監視システムを導入することで、日々の管理業務を効率化します。これにより、人手を減らしながらも高い管理品質を維持できます。
2.メンテナンスの外部委託
清掃や設備点検などの定期業務を専門業者に委託することで、運営者の負担を軽減できます。特に大規模駐車場では、外部委託が効率的です。
3.利用者の声を反映
利用者アンケートや口コミを定期的に収集し、運営に反映させます。利用者目線の改善が稼働率アップにつながります。
個人経営方式に向いている人の特徴
個人経営方式は、運営の自由度が高い反面、手間や責任も伴う方法です。
この方式が向いているかどうかを判断する際には、自身の目指す運営スタイルやリソースを考慮することが重要です。
向いている人の特徴
1.運営に積極的に関わりたい人
個人経営方式では、料金設定や設備選定、日々の管理業務など、駐車場運営の全体を自ら管理します。運営に主体的に関与し、経営の工夫を楽しめる人には最適な選択肢です。
2.柔軟な運営方針を求める人
周辺環境の変化や需要に応じて、料金やサービスを柔軟に変更できるため、自由度の高い経営をしたい人に向いています。
また、オリジナルの設備やサービスを導入して、利用者満足度を高めることが好きな人にも適しています
3.収益性を重視する人
管理業務を外部に委託しないため、運営コストを抑えつつ、収益を最大化できる可能性があります。長期的に見て高い収益性を求める人には適しています。
4.土地を有効活用したい人
遊休地や狭小地など、活用の難しい土地を効率的に収益化したい場合、個人経営方式が選択肢として有効です。
まとめ
駐車場経営の個人経営方式は、運営の自由度が高く、収益を最大化できる可能性を秘めた経営スタイルです。
土地を有効活用し、自分で管理や運営を行うことで、地域の需要に応じた柔軟な経営が可能になります。
ただし、自由度の高さに伴い、設備投資や日々の管理業務、トラブルへの対応など、運営者自身の積極的な関与が求められます。
また、成功の鍵となるのは、立地条件や収益シミュレーションを十分に調査し、計画的に進めることです。
駐車場経営でのリスクや負担を減らしたい場合には、個人経営方式ではなく「一括借り上げ方式」などの他の経営方式も検討してみると良いでしょう。