駐車場経営をしていると、以下のような予期せぬトラブルが発生することがあります。
・駐車場内からの出庫の際にゲートに激突して、設備が破損しまった。
・駐車場内で車上荒らしが発生してしまった。
・駐車場の看板が隣の敷地の倉庫に落ちてしまい、損害賠償を求められた。
これらのトラブルは、ある程度の対策はできても、全てを完全に予防することはできません。
そこで入っておきたいのが駐車場経営のための保険。
保険に加入することで、突然被害に遭った際にも、補償を受けることができます。
本記事ではあなたの駐車場経営で起こりうる様々なトラブルに対応する為の保険を解説いたします。
保険に加入する必要性
駐車場経営は長期にわたり運営されることが多いため、安定した収益確保のためにも保険加入が役立ちます。長期間で見ると、自然災害や第三者によるいたずらなど、予測が困難なリスクが発生する可能性は避けられません。保険に加入することで、こうした突発的な出費を抑え、安定した経営を維持するためのリスク回避策として有効です。
特に駐車場は無人で運営されることが多く、利用者同士のトラブルや、第三者による損傷など、オーナーが直接管理できないリスクも少なくありません。
このようなリスクに対して保険に加入することで、万が一の損害発生時にも補償が得られ、金銭面での負担を軽減できます。
さらに、信頼性のある経営体制を構築することで、利用者からの安心感を高め、長期的にリピーターを増やすことも期待できるでしょう。
保険は単なる費用ではなく、駐車場経営を長期的に支えるための重要な投資といえます。
駐車場経営で加入しておくと便利な保険
では、駐車場経営において保険が必要といっても、具体的にどのような種類の保険が存在し、どのようなリスクに備えることができるのでしょうか?
駐車場で起こりうる事故やトラブルにはさまざまなケースがあり、それぞれの場面に対応できる保険を選ぶことで、経営者としての不安を大幅に軽減できます。
この項目では、万が一のリスクに備え、安心して経営を続けるために加入しておきたい保険を「車両に関する保険」と「駐車場設備に関する保険」の2つのカテゴリーに分けて、目的や特徴について詳しくご紹介します。
車両に対する保険
■動産総合保険
動産が火災や盗難などといった偶発的な事故で損害を受けた場合に補償される保険。
動産の保管中だけでなく移動中や展示中、使用中に適応されます。
動産とは
土地やその定着物(建物)以外、不動産以外の財産のことです。
例えば下記のようなものが挙げられます。
・現金や商品、家財一式
・自動車(ナンバープレートが付かないものも対象内)
・航空機、鉄道車両、船舶(動力機のない船も含まれる)
・物件の確認が困難なもの
など、多岐にわたるものが動産と言われます。
免責事由に触れないすべての偶発的な事故によって受けた損害を補償してくれる保険ですが、動産の損害以外にも損害防止費用や残存物片付け費用、損害に対応するために発生した臨時費用(交通費や宿泊費など)をカバーしてくれる保険です。
もしも、保険に入っていなかったら…
精算機から現金が盗まれてしまい、警察へ被害届を出したものの自費で精算機の購入や盗難額の補填など対応したため、100万円以上の出費となってしまった。
■自動車管理者賠償責任保険
この保険はお客様から自動車を預かる事業者向け(駐車場、修理工場)の保険です。
預かった車の損壊や盗難被害に遭った場合に対しての賠償責任を補償してくれます。
またオプションではありますが、被害を受けた自動車が使用不能になった場合、代車費用を補償してくれることもあります。
ただし、常駐の管理人がいないコインパーキングや月極駐車場のような場所を貸している駐車場については駐車場側に補償の責任が無いため非対象になりますので注意が必要です。
また過失算定割合を保険会社側から主張される場合によっては、保険金を支払ってもらえないこともありますので、契約の際にはよく確認しましょう。
駐車場設備に対する保険
■機械保険
不測の事態・突発的な事故で機械設備や装置に対して、損害が発生した場合補償してくれる保険です。
損害を受けた機械設備を復旧するために必要な修理費に対して保険金を支払ってくれます。
また、設備や機械が破損した際に発生する費用(片付け費用など)まで補償します。
こちらの保険は他の保険と一緒に契約することでさらに幅広い範囲までカバーできます。
機械利益保険と契約した場合 | 機械保険が適用された状態で逸失利益が発生した場合に填補 |
火災保険と契約した場合 | 機械破損から派生した建物に対する事故や損害まで補償 |
■機械利益保険
機械保険が適用される事故や事態において発生する逸失利益を填補してくれる保険です。
遺失利益とは工場や作業場、事務所など機械を使った事業を行っている箇所において、機械保険で担保される事故により被害を被った結果に起こる、機械の操業の休止・阻害による利益の喪失分、営業を維持するための経常費、失業中の損失軽減費などの各種費用を指します。
こちらの保険は機械保険と一緒に加入しましょう。
■火災保険
建物や建物内にある家財などが損害を受けた場合に填補してくれる保険です。補償対象は建物のみの場合は下記の様になります。
・建物
・門、塀、垣
・物置や車庫
・庭木
・冷暖房設備
火災保険という名称ですが、火災以外の自然災害や建物に対する追突・損傷事故の損害もカバーしてくれるので、屋外にある駐車場経営では必須ともいえます。ただし、地震や噴火などそれらによって生じた災害に対しては補償の範囲外なので注意が必要です。
以下は火災保険による補償範囲一覧になります。
災害内容 | 補償される例 |
火災 | 失火やもらい火による損害 |
風災 | 台風による損害 |
水災 | 台風や大雨による洪水や床上浸水などの損害 |
落雷 | 落雷による火災や損害 |
雹災 | 雹による損害 |
雪災 | 大雪などによる損害 |
外部からの衝突 | 建物への自動車の衝突事故や石やボールが投げ込まれたことによる損害など |
水漏れ | 上階からの水漏れや配管の故障によるトラブル |
騒擾(そうじょう)行為 | 騒擾や集団行為によって起こる破壊や暴力行為による物件の損害 |
盗難 | 盗難に伴う破損や損傷による損害 |
突発的事故 | 自宅で起こった故意のない、突発的な事故による損害 |
爆発 | ガス漏れなどによる爆発事故や火災による損害 |
もしも、保険に入っていなかったら…
マンションの1階部分を駐車場として運営しているが、その壁に車で擦ったような傷が見つかった。おそらく利用者が擦ったのだと思われるが名乗り出ることはなく、誰が傷つけたのか不明のまま壁の塗り直しを行った結果、30万程度の費用が掛かってしまった。
■施設賠償責任保険
施設の管理や職務の遂行による対人、または対物の事故による賠償責任を補償してくれる保険。
様々な業種に幅広く対応している保険で、被害者への損害賠償金や弁護士費用などの各種費用に対しても補償の範囲内となっています。また「指定管理者制度」(※)にも対応しているので、民間施設だけでなく公的施設での事故でも安心です。
※指定管理者制度とは
公共団体が公の施設の管理を民間の事業者やNPO法人などの団体に委ねる制度のこと。
例えば、下記のような例が挙げられます。
・施設の屋根の一部が破損・落下、隣の敷地を破損させてしまった(施設の管理による対物の事故)
・配達中の事故で相手にけがをさせてしまった場合(職務の遂行による対人の事故)
こちらの保険は日本国内において保険加入期間中に発生した事故が対象となります。
また、損害の発生事由によっては保険金が支払われない場合もございますのでご注意ください。
もしも、保険に入っていなかったら…
経営している駐車場に設置していた看板が落下し、隣接敷地のフェンスを破損させた。
その結果、修理費として50万円請求された。
保険に加入する際の注意点
保険に加入する際には以下の点についてよく確認しておくべきです。
・保険が補償してくれる範囲
駐車場内の車両事故や設備損傷、第三者への被害など、すべてのリスクが補償範囲に含まれているかを確認しましょう。
・保険率(補償の割合)はどの程度か
事故発生時に、損害額の何割が補償されるか(例:70%補償など)を事前に確認しておくことが大切です。
・保険適応期間(補償期間)
更新手続きの忘れ防止のため、満期前にリマインダーを設定し、スムーズに継続できるよう備えておきましょう。
・保険料の金額や支払い方法、支払期日
支払いの頻度や方法によって保険料が異なるため、自分の経営状況に合った支払いプランを選びましょう。
・保険失効の条件
未払いのほか、事故報告の遅延などで保険が失効するケースもあるため、失効条件を把握しておく必要があります。
・解約時の払戻金の有無
途中解約した場合に未経過分が返金されるか、または手数料が発生するかどうかを事前に確認しましょう。
この他の内容についても、しっかりと約款※や規約などでよく確認しましょう。
契約の際の写しは大切に保管し、必要な時に契約内容を確認できるようにすることが大切です。
※約款(やっかん)とは、事業者が不特定多数の人との契約を行う際、迅速・効率的に行うために作成する定型的な契約書面のこと
契約書と同じく事業者と利用者の双方を法的に拘束する書面です。