500㎡以上の駐車場を運営する場合は、所属している自治体に届け出を行い、必要な書類を提出する必要があります。
さらに、事業を安定させるには役立つ資格が大きな助けになります。
簿記を学べば駐車場経営での財務管理が楽になり、宅地建物取引士の資格を持っていると土地の有効的な活用に使えます。
これらを活用して安心できる駐車場を運営しましょう。
駐車場経営に資格や申請は必要か
月極駐車場を運営する場合、特別な資格や免許は基本的に不要です。土地を用意し、必要な設備を整えれば、すぐにでも事業を始めることが可能です。
運営形態によっては自治体への届け出が必要になる場合がある
一方で、500㎡以上の規模で、不特定多数の人が自由に出入りできる「コインパーキング」や「時間貸し駐車場」を運営する場合は、注意が必要です。都市計画区域内でこのような駐車場を運営する場合は、自治体への申請や届け出が必要になります。
具体的には「駐車場法」に基づき、都道府県や市区町村に届出をしなければなりません。また、事業を運営する場所の規模や立地によっては、建築基準法や消防法など、関連法令も関わってくる可能性があります。
また事業の規模によっては経理や税務の知識が求められる場面も出てくるため、簿記の基礎を学んでおくと安心です。専門的な資格は必要なくても、事業をより効率的に運営するための知識は持っていると役立つでしょう。
駐車場経営に必要な届け出
駐車場を経営する際に、基本的には届け出などの提出は不要です。
ですが一部の例外の場合、駐車場法に基づき届け出が必要となるケースがあります。
届け出が必要になるケース
では届け出が必要になるケースとはいったいどのようなものでしょうか。
下記のような状態が挙げられます。
- 一般公共の用に供する駐車場
- 駐車場面積が500㎡を超える
- 利用料金を徴収している
1.一般公共の用に供する駐車場
「一般公共の用に供する」という言葉は、法律や条例などで使われる表現で、「一般の人々が自由に利用できるように提供されること」を指します。
つまり、特定の人だけではなく、一般の誰もが利用できる駐車場ということです。
・不特定多数の利用者を対象
施設の利用者や特定の契約者に限らず、誰でも自由に駐車できることが条件です。
これには、料金を徴収する場合や無料で提供される場合の両方が含まれます。
・商業施設や公共施設に付随する駐車場
ショッピングセンター、病院、公共のイベントホールなどに付随して設置されている駐車場も含まれます。これらの駐車場は、施設を利用する不特定の人々に対して開放されているため「一般公共の用」に該当します。
・駐車料金の徴収の有無
駐車料金を徴収しているかどうかは、「一般公共の用に供する」には直接関係しません。したがって、時間貸し駐車場(コインパーキング)や市営駐車場も該当します。
2.駐車場の総面積が500㎡以上
500㎡以上の駐車場を経営するという規定は、大規模な駐車場が周辺環境や交通に与える影響を考慮して設けられています。
届出が必要な駐車場の条件
・自動車の駐車の用に供する部分の面積が500㎡以上
・駐車台数が20台以上(10台でほぼ要件を満たしている)
ちなみにこの判定には通路などの別途面積は含まれません。
あくまで、駐車スペースになっている部分が該当します。
3.利用料金を徴収している
コインパーキングなど、利用者から駐車場料金を受け取っている場合も該当します。
これらすべての条件を満たす場合、駐車場の設置前に所管の自治体へ届出を行う必要があります。
また、供用開始後には管理規程を定め、数日以内に届出を行う義務が発生します。
月極駐車場や従業員専用駐車場など、利用者が限定されている場合は対象外となることがありますので、詳細や手続きについては、設置予定の自治体の担当部署に確認することをおすすめします。
届け出先
届け出は、駐車場が所在する自治体(都道府県や市区町村)の建設担当部署に行います。
自治体によっては担当部署が異なる場合があるので、事前にどの窓口に届け出をすべきかを確認しましょう。
必要な書類
・駐車場の図面
駐車スペースの配置や出入り口の設計などが示された図面
・施設の概要書
駐車場の面積、収容台数、運営形態などを記載した書類
・管理計画書
安全対策や運営方法を示す書類
・その他必要な書類
自治体によって異なるため、事前に確認が必要
手続きの流れ
①事前確認
計画している駐車場が法律や条例に違反しないかどうかを自治体に相談します。
②書類作成
必要な書類を作成し、申請準備を整えます。
③申請・届け出
書類を自治体の担当窓口に提出し、審査を受けます。
④審査・承認
自治体によって審査が行われ、問題がなければ承認されます。
注意点
・法令遵守
建築基準法や消防法など、他の法令に違反しないように注意する必要があります。(例えば、駐車場の設計が避難経路を妨げていないか、出入り口が道路交通の安全を確保しているかなど)
・無届出の罰則
「駐車場法」第12条に基づいて、届け出が必要な駐車場を管理している者が、正当な理由なく届け出を怠った場合には罰則の対象となります。具体的には、10万円以下の過料が科されることがあります。
これは、都道府県知事または市町村長への届出が義務付けられているにもかかわらず、届出を行わない場合に適用されます。
・不正な届け出の罰則
虚偽の内容での届出や、届出後に変更があった場合にそれを報告しない場合も、罰則の対象となりえます。
駐車場経営に役立つ資格
駐車場経営を考える際、特別な資格が必須ではないことがほとんどですが、運営をスムーズに進めるために役立つ資格はいくつかあります。
これらの資格を取得しておくことで、管理や事業の運営を効率的に進めることができるでしょう。
・簿記
駐車場経営では、日々の収入や支出、税金の処理を行う必要があります。簿記の知識があると、財務状況を的確に管理し、正確な会計処理ができるため、事業の健全な運営に役立ちます。また、経理業務を効率化することで、コスト管理や利益の把握がしやすくなります。
・宅地建物取引士
この資格を取得することで、不動産に関する法的知識や契約のポイントを学べます。駐車場経営では、土地の取得や賃貸契約が関わる場合が多いため、土地取引に関する知識があると、契約時のリスクを減らし、土地の有効活用についても効果的に計画できるようになります。
・ファイナンシャルプランナー
資産運用や事業計画に関する知識を持つことで、長期的な駐車場経営の資金計画を立てやすくなります。適切な資金の使い方や投資の判断を行い、将来の収益を見据えて事業を展開することができるため、事業の安定性を高めることに役立ちます。
・防火管理者
特に大規模な駐車場を運営する際は、火災への対策が重要です。この資格があれば、火災予防や緊急時の対応を学べるため、駐車場の安全性を高めることができます。利用者の安心を確保することで、信頼される施設運営が可能になります。
・安全管理者
駐車場での事故防止や安全管理を行う際に役立つ知識を得られます。駐車場内での車両事故や歩行者との接触を防ぐための対策を実施できるため、トラブルを未然に防ぐことができます。また、利用者にとって安全な環境を提供することで、顧客満足度を向上させることが期待できます。