駐車場経営においてオーナーや管理者が把握すべきトラブルは多岐に渡ります。
例えば無断駐車や迷惑駐車と呼ばれる駐車方法は駐車場経営の収益を直撃するだけではなく、その他のトラブルの種原因にもなり得ます。
しかも、それらの問題点として、トラブルを起こした利用者に対して法的罰則が科され、きちんと料金や損害を徴収できるとは限らず、オーナー側が泣き寝入りするケースも多々あります。
情報伝播の早い現代ではたまたま敷地内の違法駐車が目撃されてSNSなどへアップロード。炎上の現場となってしまうこともあるでしょう。この場合は違法駐車をした利用者を見つけることはできるかもしれませんが、駐車場自体には悪評がついてしまうかもしれません。
その様な一方的な被害や孫を被らない為にも、違法な駐車関するケースや法律には常日頃から目を光らせて置き、事前の予防策をできるだけ打ったうえで、ケース別に適切な対処ができるようにしておくとよいでしょう。
本記事ではこれらの違法な駐車に関する定義づけや名称、ケースを紹介いたします。
また、別記事にて予防策、そして万が一発生してしまった後の対処法について詳しく解説いたしますので合わせて活用してください。
違法駐車と料金トラブル
駐車場内、特にコインパーキング内で発生しやすい主なトラブルが、違法駐車とそこから発生する料金のトラブルです。
駐車場は従来所定の区域を貸し出し、その賃料を徴収するというシステムですが、様々な違法駐車で、この料金を踏み倒されるケースがあります。
違法駐車と料金トラブルは密接に関係していますので、まずはそれらのケースを確認していきましょう。
無断駐車(契約外駐車)
契約していない駐車場や月極駐車場、マンションの住民専用駐車場に無断で駐車することは「無断駐車」と分類されます。
これは所有者の財産権を侵害する行為であり、民事訴訟によって損害賠償を行うことが可能です、ただし現実的には少額なため、その訴訟コストの方が高くオーナー側が泣き寝入りするケースが多いと言えるでしょう。
また、特定の使用者や住人専用の駐車場に第三者が無許可で駐車することもこの範疇に入ります
加えて月極や時間貸しの駐車場を契約していても、契約で定められた場所や時間を守らずに駐車することは契約違反です。
例えばA駐車場の月極契約があってもどこに停めてもいいわけではない。と考えるとわかりやすいですね。
これらの問題は「違法駐車」「不正使用」「駐車違反」などといった表現をされることもあります。
料金未払い 踏み倒し
無断駐車、違法駐車の延長線上に、料金未払いのトラブルが存在しています。
例えば月極駐車場では契約の無い車が定期的にスペースをふさいでいるといったケース。
コインパーキングでは、仕様により課金のカウントシステムが異なりますが、意図的にそれらのカウントをスタートさせないような駐車を行うケース。または、出庫時にゲートやロック機能を破壊するケース。
お客様専用駐車場を利用しているにもかかわらず、その施設で買い物を行わないケースなど、様々なシチュエーションがあります。
これらの行為も違法性が認められるため、当然罰金の対象となることはありますが、現場を押さえないと泣き寝入りとなるケースもあります。
特にコインパーキングでは以下の様な違法な駐車、あるいは出庫方法があります。
- 駐車カウントの開始となるフラップなどを避けたはみ出し駐車
- タイヤロックなどの精算の補助システムを強制解除
- 出庫時、あるいは停車時にセンサーを阻害する
- 駐車スペース以外に停めてカウントを免れる
この様に様々な手段を使って、料金踏み倒しを行います。
昨今ではSNSなどで「この駐車方法は違法なのでは?」と写真付きで話題になるようなことも増えてきてはいますが、この手の犯罪は無くなることが無いので、オーナー側としては対策が必須となります。
その他の違法な行為
駐車場内での長期放置駐車
有料駐車場や月極駐車場で、契約期間を超えて長期にわたって車両を放置する行為も違法です。この場合、駐車場の管理者は契約違反や損害賠償を請求することができ、放置された車両に対してレッカー移動などの措置が可能になることもあります。
出入り口を塞ぐ駐車
道路との間に面する場所や、必ずほかの車が通る位置、導線への停車は違法行為となり罰金の対象です。出入り口を塞がれると、それ以上の車の対流が止まってしまうため、非常に悪質な行為となります。
機器の不正利用
駐車場内に設置された電気充電スタンドや特定の利用者向けの設備を無断で使用する行為も、施設の不正利用として違法となることがあります。これに対しても、管理者が法的措置を取り、対処しなければならない場合があります。
駅のトイレの電源を抜いてそのコードで携帯電話を充電し補導されたケースもありますが、用途の違う設置物でもこのように盗電することができるので、現代ではこのような犯罪は避けて通れないケースと言えるでしょう。
【無断駐車対策】駐車場経営者が知っておくべき効果的な対応法と請求方法→
駐車場内での事故や破損 物損について
管理区域内での事故や破損には様々なケースがありますが、この章では車を機意図したケースを紹介します。
どのケースの場合も過失割合の算出などが発生しますが、その根拠となるものは駐車場オーナーの場合、駐車場自体の照明や見通し、構造的な広さなどが要因となります。
劣化などにより場内の見通しが悪くなっている場合は、過失割合が発生するケースがありますのでこれらを捉えつつどのようなケースがあるかを考えていきましょう。
車同士の接触事故
狭い駐車スペースで駐車中に隣の車両に接触する場合や、バック時に後方確認を怠り、通行中の車にぶつかる場合があります。
これらは移動中の車両同士、片方が停車している場合など様々なケースがあります。
片方が停車中の場合は「当て逃げ」に発展するケースがあり、カメラの映像提出が求められることもあります。
このような物損事故は、過失割合が通常の道路上の事故と異なり、特にバックする車両の過失が大きくなりやすい傾向にあります。
駐車場内の車両事故は運転車同士は相手がいるため、被害者と加害者の過失割合に基づいて損害賠償が求められることが多く、場合によっては保険会社を介して修理費が補填されます。
車と人の接触事故
駐車場内は当然乗り入れの用途を有する為、駐車場内の視認性が悪い場所や、子供が突然車の前に飛び出したりなど、ドライバー側の注意義務が問われます。
場内は通常道路と異なり、規定された横断歩道がないことが多く、歩行者はどの方向からでも現れる可能性があり、特に車両側が特に注意を払わなければならない場面が多くなります。
車と場内設備の接触事故や物損
停車中の車に追突するケースと同じく駐車場の設備であるフェンスや街灯にバックで衝突したり、ゲートバーや精算機にぶつかり、物損となる場合があります。
これらは物損事故として処理され、設備の修理費用が発生します。
基本的には加害者となる車両の運転差が損害を補填する義務があり、駐車場の所有者や管理者との間で賠償交渉が行われることが一般的です。
しかし、前述したように場内の状態が著しく悪ければ、過失割合がオーナーに発生することも考えられます。
また、これらの損害は保険でカバーされる場合もありますが、設備修繕の間までに使用不能なスペースが発生し売上が落ちる可能性がある為、事故自体を未然に防ぐことが大切です。
もっと詳しく保険について知ろう
【駐車場経営と様々な保険】発生する事故と損害による損失を最低限に抑えよう→
低床車両の引っかかり
低床車両の場合、設備と高さが合わず引きずってしまうケースが存在します。車高の低い車両がフラップや段差に引っかかり、スムーズに出庫できないといった形です。
どのような車両が駐車場を使うかは事前では想定しきれない為、なるべくどのような車が来ても物損が起きないような設計をしておく必要があります。
まず、入口や出口の段差を最小限に抑えることが重要です。段差が避けられない場合は、なだらかなスロープを設置し、低床車両でも安全に通行できるようにします。
フラップ式のゲートを使用している場合は、低床車両対応のものを選択しましょう。これらのゲートは、車両が通過する際に完全に地面に沈み込むため、引っかかりのリスクを大幅に減らすことができます。
低床車両に限りませんが、入り口付近に注意喚起の看板を設置することも効果的です。「低床車両にご注意ください」などの表示を行います。
これにより、利用者の意識を高め、トラブルを未然に防ぐことができます。
その他の設備の破損
その他の破損としては経年劣化による破損などが挙げられます。
- 標識や看板の劣化
- 排水溝のつまり
- 照明器具の劣化
- 石や車止めの劣化
- 白線の消失
- アスファルトの破損
- 道路設置面の破損
- フェンスの錆
- 電気設備の断線
- ゴミ箱等小さい設備の劣化
色々と破損に関する内容はありますが、これらは定期的なメンテナンスだけでは判断のし辛い物もあります。
例えば、3か月に1回など定期的に写真を撮っておき、劣化が感じられるようであれば補修や入れ替えを検討してみるのもよいでしょう。
ほとんどの設備は一般的に導入業者か、仲介となる駐車場事業者に相談することが一般的です。
特に直接利用者に関係する部位は見栄えも含めて大切な駐車場の要素です。日曜大工などで対応せずに業者に対応方針や見積もりを取るようにしましょう。
また、修繕費用に関しては税制上の優遇措置がかかわる可能性がありますので、どの規模でいくら修繕するかなどを見立てて、対象の優遇措置の枠内に収まるかどうかも考慮するとより効率的な運用が可能になります。
場内事故のその他知識
駐車場内での事故の約40%は、車がバックしているときに発生すると言われています。
特に駐車スペースへの停車時や出庫時に、他の車や工作物(壁、街灯など)に接触することが多くあります。
また、ドアを開けた際の接触も多く報告されています。
管理区域内での事故は基本的に警察に届けることが義務付けられており、違反すると罰金の対象となる可能性もありますので、しっかりと出来事を把握する必要があります。
駐車場ので案内不足や、見通しの悪い設計となっている場合は駐車場オーナーが罰せられたり過失割合が多くなるケースもあります。当然のことですが見通しがよい構造で、把握のための監視カメラが複数起動している状態が好ましくなります。
駐車場内での盗難や迷惑行為と近隣トラブル
車上荒らし
車上荒らしは、特に監視が不十分な駐車場や、目立たない場所に停車している車両がターゲットにされやすい問題です。繁華街やショッピングモールの駐車場だけでなく、住宅街の月極駐車場や高速道路のサービスエリアなどでも発生します。
特に屋外で人気のない地域や夜間の照明が十分でない場所は、特にリスクが高いとされています。
手口としては下記の様なものが挙げられます。
窓ガラス破壊
最も一般的な手口は、窓ガラスを破壊して車内に侵入する方法です。鍵の有無に関係なく行われるため、手法としては古くからあるものの、対策が難しい方法と言えるでしょう。犯行時間は非常に短く、わずか数十秒で犯行が完了する場合もあります。
無施錠の車両を狙う
こちらも古くからある手法で、現在ではロックの関係上少なくなりましたが、まだまだこの手口も存在しています。犯人は駐車場内で車のドアハンドルを試し、鍵のかかっていない車を選んで貴重品を盗みます。1.2分の合間でも犯行ができてしまう、車オーナーの油断を突いたものです。
スマートキーのハッキング
昨今のスマートキーの普及により、新たに発生した手口です。スマートキーの信号をキャッチし、リレーアタックという手法で車のドアを解除し、侵入することが可能です。電子的なアプローチとなる為、通常の施錠だけでは防げないものとなります。
ナンバープレートや車両部品の盗難
車上荒らしの中には、車内の物品だけでなく、車両そのものやナンバープレート、さらにはタイヤやミラーなどの外部部品を盗む手口もあります。特に高価な部品や改造車のパーツは狙われやすい傾向にあります。部品の盗難はすぐには気づかれにくいこともあり、犯行が発覚するまでに時間がかかることがあります。
上記の様な車上荒らしに対しては駐車場オーナー側での手立てとしては、なるべく明るく開けたスペースの確保や、注意喚起の設置が挙げられます。
また、場内設備では車上荒らしに対する補償ができない旨を掲げる場合もあります。
とはいえ、車上荒らしの頻発する駐車場は悪評が経ち使ってもらえない可能性が増えてしまうため、基本的には明るく清潔なで、監視カメラなどの措置を実行しているといった防犯対策を実行し、車上荒らし側にも見えるところでそれらを周知しておく必要があります。
騒音問題
近隣住民からの苦情の中で最も多いのが騒音問題です。
駐車場の利用者が出す音は、周辺の住民にとって不快な存在となる可能性があります。特に夜間や早朝の騒音は、トラブルの原因となりやすいでしょう。
騒音の主な原因としては、車のエンジン音や利用者の会話が挙げられます。エンジン音については、アイドリングストップの推奨や防音壁の設置が効果的な対策となります。利用者の会話に関しては、静かに利用するよう注意を促す看板の設置が有効です。
また、駐車場の構造上、音が反響しやすい場合は、吸音材を活用することで騒音を軽減できます。地面にゴムマットを敷くことも、タイヤの走行音を抑える効果があります。
深夜や早朝の利用制限を設けることも、騒音問題の解決策の1つとなります。ただし、24時間営業が売りの駐車場の場合は、他の対策を重点的に行う必要があるでしょう。
騒音問題に対しては、近隣住民とのコミュニケーションが重要です。定期的に意見交換の場を設け、苦情や要望を聞く機会を作ることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
排気ガスや臭気
排気ガスや臭気は、コインパーキングの近隣住民にとって深刻な問題です。視覚的に捉えづらいため、問題の発覚がズレこむ危険性も内包しています。
特に、駐車場が住宅地に隣接している場合、この問題は顕著になります。
匂いの基となるものが、車起因であるのか、立地から来る匂いだまりであるのか、ごみの処理サイクルの問題であるのか、はたまた複合要因化などを考える必要があります。
駐車場オーナーとしては、駐車場として開墾する前の段階でこれらの諸問題が土地由来でないことを確かめて必要があります。
照明や看板の明るさ
意外と見落としがちなクレーム元が「光」つまり照明です。
駐車場は元来犯罪発生抑止のため、広く明るいことが求められますが、深夜も同じ程度の光量を必要とする為、これ自体が近隣順民のクレームにつながる可能性があります。
利用者の安全性と利便性を担保するが、過度な照明は近隣住民に迷惑になるという両天秤の図式です。
これらの問題を解決するには、センサーシステムの導入やさえぎる為の看板配置などの工夫が求められますが、構造やシステムを伴う設置作業となる為、オーナー側の負担も大きくなります。
長期で見れば、近隣との良好な関係の維持のため支払う価値のあるコストであると言えるでしょう。
機器トラブルと管理
精算機のトラブル
精算機のトラブルは、収益に直結するだけではなく、中にはそのままでは利用者が出庫できなくなる可能性を秘めており、最も遭遇したくないトラブルの1つです。
代表的な精算機のトラブルには、以下のようなものがあります。
- 紙幣や硬貨の詰まり
- 駐車カード読み取りエラー
- レシート印刷の不具合
- 画面表示の不良
- 精算機の動作停止、故障
これらに対し利用者の不便を最小限に抑えるため、以下の様な対策を講じることが重要です。
- 定期的なメンテナンスの実施
- 故障時の緊急連絡先の明示
- 代替支払い方法の用意
- トラブル発生時の対応マニュアルの整備
利用者が出庫できないタイプのトラブルが一番問題が大きくなる可能性を秘めている為、精算機に連絡先を明記しておくことは特に確認します
こうした精算機のトラブルを未然に防ぐには、耐久性の高い機器の選定や、定期的な点検が効果的です。利用者への丁寧な説明と謝罪も、トラブル時の対応として欠かせません。
提携事業者を利用して運用する場合も、点検がどの程度の頻度で行われるのかを詰めて契約することが、オーナーがやるべき対策の1つとなります。
フラップなどのロック機能の破損
事故や破損の項目でも記載しましたが、精算機と連携しているシステムが破損する場合があります。
ケースや状況としては下記のとおりです。
- 駐車前から破損しており、駐車カウントが開始できない(出庫をロックできない)
- 駐車中に破損し、フラップ等のロックが解除されず出庫不能になる
- 利用者が故意に破損させ、利用料金を踏み倒して出庫させる
駐車場のロックに関する機能はバーやチェーンなど空間的な出入りを制御するゲートタイプと、タイヤ周辺をロックするタイプなどに分けられますが、どの場合でも、故障する状況を完全には否定できません。
こうしたロック機能が停止している場合、実質そのスペースは使えない扱いとなる為、新規の物が設置されるまでは確実な売り上げダウンとなってしまいます。
これらのトラブルも精算機のケースと同じく下記のような項目を用意しておきましょう。
- 定期的なメンテナンスの実施
- 故障時の緊急連絡先の明示
- トラブル発生時の対応マニュアルの整備
また、破損を発見した場合にも連絡を貰えるような書き方をしておくとベターです。
駐車場トラブルの対応・対処方法に関して
ここまで紹介してきたように、駐車場は多種多様な利用者と自動車やその他乗り入れ車両、そして様々な据え置き設備や電気型の設備などで成り立っています。
さらに、基本的には青空駐車場と呼ばれるオープンスペースが多く、近隣の建物や住民の方への影響も避けられません。
その為、それぞれのケース対応も多岐にわたります。
本記事では様々なトラブルのケースを紹介しましたが当サイトではそれぞれのケースに対して、対処方法などを特集した記事を用意しています。
こちらも是非参考にしてください。