「駐車場オーナーってインボイス制度関係あるの?」
実は関係あります。
契約の観点から見ると、駐車場オーナーは駐車場利用者と個別に取引をしていることになるので、常に領収書を発行する立場になります。
つまり「注意されたら対応すればいい」という心持ちでは済まされないのです。
インボイスは2023年10月より本格的に運用が開始されていますが、見逃していることや知らない項目、不安な内容はありませんか?
こちらの記事では、駐車場オーナーに向けたインボイス制度をわかりやすく解説していきます。
この記事を通して、なるべく早く不安を解消していきましょう。
【インボイス制度とは】
正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。
請求書を英語にすると「Invoice」なので、インボイスと呼ばれるようになりました。
インボイスを簡単に説明すると、消費税が正しく記載された請求書を発行して、保存しましょう。という制度です。
今回の記事には、2つの登場人物がいます。
・買い手(借主)=駐車場利用客
・売り手(貸主)=駐車場オーナー
この記事を読まれているほとんどの方は、駐車場オーナーだと思います。
つまり、ご自分は売り手であることを念頭に置きましょう。
インボイス制度は、買い手が請求書(インボイス)を保存しておくことで、後日ビジネスで支払った消費税として税務申告時に差し引くことができます。
裏返すと、請求書(インボイス)が無ければ認められないことになります。
なぜインボイスがないと認められないのでしょう。
それは取引において、どの時点で国に税金が納められたかを確認する手段がインボイス以外に無いからです。
駐車場を借りる
▼
請求書通りに払う(税込み)
▼
ビジネスとして利用したので税務申告時の手続きに請求書が利用できる
この流れを保証するものがインボイスといえます。
駐車場オーナーからすると、お客様の支払いを証明する立場にあるというわけです。
また、現在の日本の消費税は、標準税率10%と軽減税率8%の2つが混在しています。
そのため、どちらの税率が適用されているのか一目見てわかるように、区分記載請求書(領収書等)に税率・消費税額、そして登録番号を記載する必要があります。
【インボイス制度が駐車場経営に与える影響とは?】
今回のインボイス導入では課税事業者であることがインボイス(適格請求書)の発行条件になっています。
免税事業者は消費税の申告・納税義務がなくこれがある種のメリットとなっていましたが、インボイスが発行できる課税事業者にはこれらの申告義務があります。
そのため課税事業者になるか、そのまま免税事業者として経営をするかの判断が必要となります。
インボイス発行が課税事業者しかできないのは前述したとおりですが、では、免税事業者でいることのメリットとデメリットをそれぞれ考えてみましょう。
免税事業者でいることのメリットとデメリット
~メリット~
- 消費税の申告・納税義務がない
- インボイス手続きの手間が省ける
- 現地案内の書き替えの必要がない(看板等)
~デメリット~
- 後から請求書に関する対応を求められたときに対応できない場合がある
- インボイス手続きの手間がかかる
- 借主退去の可能性がある(月極等)
免税事業者のままでいる大きなデメリットは、月極などで契約しているお客様を失う可能性があることです。
理由は、ここまで記載している通り借主からするとインボイスを発行してくれる貸主と取引をする方が、消費税を申告する際に有利になるためです。
契約の見直しをされた時に同じ値段でも借主側からすると、免税事業者と課税事業者では年間で約1ヶ月分の差が出てきます。
そうなると、他の駐車場に借主が流れる可能性あるため、免税事業者は検討面・継続面で不利を強いられることになります。
インボイスは、税負担を公平にするための、いわば証明書みたいなものなのです。
【免税事業者である駐車場オーナーの今後の対応】
免税事業者の駐車場オーナーが今後とるべき対応を紹介いたします。
- 課税事業者になり、インボイスを発行する
法人の借主にとって、免税事業者の駐車場オーナーへの支払いは、仕入税額控除ができないため、従来より税金を多く収めることになります。
駐車場利用客(借主)に法人がいる場合は、課税事業者への転換を検討しましょう。
必要な準備事項は、ページの末尾で簡潔にまとめていきます。
- 免税事業者のままでいる
借主が、個人顧客(一般消費者)のみの場合、インボイスの発行は義務ではないため、免税事業者のままでいるという選択肢もあります。
まずは、借主との契約状況を確認しましょう。
【課税事業者になる駐車場オーナーが知っておくべきこと】
免税事業者から課税事業者になった際の1番わかりやすい変更点は、消費税の申告・納税義務の発生です。
ではそれ以外には、何を知っておくべきなのでしょう。
ここでは知っておくべき2項目を紹介いたします。
- 簡易課税制度を選択できる
簡易課税制度とは、消費税計算の負担を大幅にカットし、簡単に仕入税額控除の金額を出すことのできる制度です。
駐車場オーナーが簡易課税制度を選択した場合、みなし仕入率を40%として計算できるため、納税額を抑えることが可能になります。
- 消費税の「2割特例」が使える
2割特例とは、納税額が売上げにかかる消費税の2割になる制度です。
駐車場オーナーの場合、簡易課税制度よりも納税額を低く抑えられます。
ただし、2割特例を受けられるのは令和8年9月30日までとなりますのでご注意ください。
詳細情報は以下サイトにて掲載されています。
No.6505 簡易課税制度|国税庁 (nta.go.jp)
2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁 (nta.go.jp)
【インボイスを発行するために必要な準備】
まずは課税事業者になるために、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出しましょう。
これは国税庁のオンラインサービス「e-Tax」または税務署に提出します。
申請してから登録完了までに、1.2ヶ月かかるので早めの対応をオススメします。
適格請求書発行事業者の登録申請の流れ
①用意すべき書類
・適格請求書発行事業者の登録申請書
・本人確認書類(マイナンバーカードまたは、番号確認書類と身分証明書)
②提出方法
適格請求書発行事業者の登録申請はe-Taxまたは郵送で行います。
申請書には、事業者の基本情報(事業者名、住所、連絡先など)や事業内容などを記入します。
なお、e-Taxで申請する場合には、利用者識別番号の取得も必要となります。
③審査期間
提出後、審査が行われます。
前述した通り、申請から登録完了まで1.2ヶ月かかるといわれています。
この期間は混雑状況によって前後することがあるため、早めの対応をオススメします。
④登録完了通知
登録が完了すると、通知が届きます。
この通知を受け取った時点で、正式に「適格請求書発行事業者」として認められます。
その他は、以下のような準備が必要となってきます。
その他の準備(運用編)
- 精算機の調整と発効方法の確認
発行したインボイスの情報を正確に反映させるために、必要な調整を行います。
精算機の設置事業者に問い合わせを行いましょう。
- 関係者への通達など
インボイスの発行や支払いに関する重要な変更があれば、関係者に適切に通知し、透明性を保つ必要があります。
関係者とは駐車場の現利用者、共同経営者、共同管理者に当たる人や団体です。
必ず全ての関係者に通知し、必要であれば説明の機会を設けるようにしましょう。
- 値段の調整
インボイス制度導入により、近隣の駐車場の価格に変動がないか、従来よりも念入りにチェックを入れます。
価格帯が落ち着いてれば無理に調整する必要はありません。
- 看板等設置物の調整
駐車場利用客が一目見てわかりやすいように、インボイス対応をアピールする必要があります。
駐車場本体の看板だけではなく、大通りに面した看板なども調整が必要か検討する余地があります。
また、広告やその他の集客方法を行っている場合も記載を検討しましょう。
【駐車場事業者のインボイス対応まとめ】
ではここまでの内容を簡易的にまとめてみましょう。
①インボイスに対応するか、免税事業者のままかを決める。
②変更するしないに関わらず、近隣の動向は調査し、関係者には経過と結果を申し伝える。
③インボイスが必要と判断した場合、課税事業者の申し込みの準備をする。
④通達以外に必要な現地調整、主に清算機や看板の対応を行う。
⑤簡易課税制度・2割特例などの知っておくべき情報の把握に努める。
上記の様な流れで全ての検討が終わっているかを再度点検するとよいでしょう。
一括借り上げなら、インボイス発行手続きの心配なし
ここまで紹介したように、直接事業者として駐車場オーナーとして経営をされている方には検討するべき項目や準備するものが多くありました。
しかし、土地を一括借り上げという形で事業者に貸している場合、全ての手続きはその借り上げ事業者がその事業者その名義で行います。 つまり、土地オーナーとしてのインボイス発行にかかる負担はゼロになります。
駐車場一括借り上げは事業者を選び、その事業者に運営をすべて委託するシステムなので、このわずらわしさからは全て解放されるというわけです。
もし、一括借り上げへの変更を検討される場合は下記【PR】を参考にしてみてください。