都市近郊に点在する空き地の中には、住宅建築には狭すぎたり、交通アクセスの問題から収益化が難しい土地もあります。
神奈川県横浜市郊外のこの事例では、そんな空き地を「貸し農園(市民農園)」として活用することで、地域住民のニーズに応えながら安定収入を得ることに成功しました。
本記事では、家庭菜園ブームにも乗ったこの活用法の実際を、土地の条件・運用方法・収益性・注意点に分けて詳しく解説します。
土地の概要と立地条件
所在地 神奈川県横浜市青葉区(住宅地と農地が混在するエリア)
土地の広さ 約250平方メートル(約75坪)
形状・状況 元は休耕地。雑草が多く、放置状態が続いていた。
周辺環境 ファミリー層の多い住宅地に隣接。週末利用が多い。
土地運用以前は売却も検討されましたが、土地の形状やアクセスの関係で買い手がつかず、低コストな活用方法として貸し農園が浮上しました。
実際にどう活用したのか?
農園として整備を始めたのは、地元の不動産管理会社と提携してから。
以下のような手順で活用が始まりました。
1.整地と区画分け(30区画、1区画あたり8㎡)
2.水道・簡易倉庫・道具貸出スペースの設置
3.利用契約書と会員ルールを作成
4.地域の掲示板や自治体広報誌で募集
その結果、募集から2週間で満枠。
特にリモートワーク層やシニア層からの人気が高く、利用者同士の交流も活発に。
週末には家族連れでにぎわい、地域のコミュニティ拠点としても機能するようになりました。
収益と運用の成果
料金設定 月額3,000円/区画(年間3万6,000円)
収入見込み 3,000円×30区画×12ヶ月=約108万円/年
初期投資 整地・設備設置等で約80万円(自治体補助を一部活用)
維持費 水道代、草刈り、定期巡回などで年10万円程度
2年目以降は初期費用回収後、毎年安定した黒字運営が見込まれています。
メリット・デメリットと注意点
メリット
・初期投資が比較的少なく済む
・地域住民とのつながりが生まれやすい
・景観・防犯対策としても有効
デメリット
・農作物の盗難や荒天被害への対応が必要
・管理者が不在だとトラブル対応が難しい
・土壌状態や日照条件が不向きな土地には不適
横浜市では一部地域で市民農園整備への補助制度がありますが、場所によっては景観条例や用途地域による制限がかかるため、事前確認が必要です。
この土地活用が向いている人
・人通りの少ない郊外の土地を活用したい人
・地域との関係を大切にしたい土地所有者
・長期的・安定的な活用方法を探している人
都市部よりも郊外の住宅地近くに強くフィットする方法です。
まとめ
市民向け貸し農園は、収益だけでなく地域との交流や景観改善といった副次的な価値も生む土地活用方法です。初期投資が比較的少なく、需要が読みやすいため、郊外の空き地や住宅地に近い場所に適しています。
土地の使い道に迷っている方や、売却以外の選択肢を探している方は、このような“地域と共に育つ活用”を検討してみてはいかがでしょうか。